イノシシの檻
2011 年 3 月 16 日
3月16日付 編集手帳
「核」という字のなかには「亥」(=イノシシ)がいる。〈原子核には原子力をになう猪(いのしし)/…今は人に飼いならされているけれど/いつまで、おとなしくしていることか〉。吉野弘さんの詩『漢字喜遊曲・亥(イ)短調』にある◆地震で破損した福島第一原子力発電所から高濃度の放射能が漏れ出た。檻おりを破ろうとするイノシシと、それを許すまいとする人間と、極限の攻防がつづく◆政府と東京電力の統合対策本部が被災5日目にようやく発足したこと、原発の監視が仕事の原子力安全・保安院から9時間にわたって何の説明もなかったこと…など、連携の悪さも指摘されている◆不眠不休で危機封じに没頭しているさなかに背後から批判の矢を射るつもりはない。経緯は経緯、今後は今後、連携こそが“命綱”であることを胸に刻み直したはずである。それでいい◆おそらくは飲食もままならず、暴れ狂うイノシシの檻(おり)を文字どおりの命がけで封じている現場作業員の皆さんには、小欄に目を留める余裕はなかろう。それでも告げずにはいられない。あなた方の仕事に日本じゅうが今、手を合わせて祈っている――と。
(2011年3月16日01時34分 読売新聞)
「容器」の安全と、作業員の安全、そして諸機関のスムーズな連携を祈るのみです。どうか無事でありますように。オンマリシエイソワカ



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