護摩 > 密教修法

2012 年 1 月 9 日

安田靫彦《御産の祷》(1914)・東京国立博物館

安田靫彦筆 『御産の祷』



ここで見られる安田靫彦(やすだ ゆきひこ)筆 《御産の祷》 は、『紫式部日記』から題材をとったもので、藤原道長の娘彰子(しょうし)が一条天皇の中宮となり、世継ぎを身ごもった際の安産祈祷の場面を描いたものです。

白の几張(きちょう)と屏風で囲まれた場には、半裸の女性たちが中宮の出産を控え、祈祷によってトランス状態となり、その向こう側では、密教僧が護摩供を修法しています。屏風の外では殿上人が散米しています。

『紫式部日記』によると、この安産祈祷の場には何人ものやんごとなき高僧が出仕し、中宮に取り憑く物の怪を調伏したようです。火焰を超え、青黒色の明王が忿怒の相で浮かび上がります。軍荼利明王でしょうか。

中宮を描かず、側近たちの大騒ぎを示すことで、出産の一大事を描き上げています。護摩を焚く高僧と、狂乱の姿を見せる憑坐(よりまし)の女の静と動の対比が見事です。

時代が緊張の度を増し、人々が危機的状況を痛感するたびごとに、私たち真言行者が激しく祈る姿勢が社会の表面に浮かび上がってきます。この絵を見るたび、弘法大師をはじめとする歴代先師が、時代と正面から向かい合った真摯な姿勢を彷彿としてよみがえります。

この後、中宮は無事に一乗天皇を出産することができました。

及ばずながら、その末徒に連なる一人として、拙僧も難局を切り開く道を、修法によって、精神を統一しながら問い詰めていきたいと思います。

 
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